はじめに
一般財団法人とは、2008年に行われた公益法人制度により新たに設立することができた法人形態であり、この新制度により登記のみで設立が認められるようにもなりました。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づき設立された、非営利の法人のことをいいます。
一般財団法人は公益認定申請を行い、公益認定を受けることにより、公益財団法人となることができます。公益財団法人認定には、知識のある専門家へ相談することをおすすめします。
設立要件
一般財団法人を設立するためには、300万円以上の財産と、最低7名の人員が必要です。
◇ 拠出財産
設立者が300万円以上の財産を拠出しなければなりません。この300万円の運用利益は活動原資となり事業を継続していきます。財産というのは不動産と動産の両方を含み、不動産の場合は、価値が300万円以上ということになります。
2年連続で純資産額が300万円を下回った場合、解散しなければなりません。
◇機関と人数
<一般財団法人の機関構成>
一般財団法人が選択できる期間構成は二通りあります。
① 評議員+評議員会+理事+理事会+監事
② 評議員+評議員会+理事+理事会+監事+会計監査人
※評議会は評議員3名以上、理事会は理事3名以上によって構成されます。
大規模一般財団法人(賃借対照表の負債の合計額が200億円以上の一般財団法人のこと)は、②にあります法にならって会計監査人を置かなければなりません。会計監査人は公認会計士又は監査法人でなくてはなりません。多くの方は①を選ぶことになるかと思います。
一般財団法人は、評議員3名、理事3名、監事1名が必要で、最低7名必要になります。
一般社団法人との違い
一般社団法人と一般財団法人は共通点もあるが、一般社団法人の設立時の資金が0円なのに対し、一般財団法人は300万円以上必要という点が大きな相違点です。一般社団法人は、ある目的のために「人」が集まり、活動したりサービスを提供したりします。一般財団法人は、ある目的のために拠出された「お金」を運用した活動をしています。
一般社団法人 | 一般財団法人 | |
---|---|---|
設立者 | 社員2名以上 | 1名以上 |
設立方法 | 設立登記のみ | 設立登記のみ |
設立時役員と最低人数 | 理事1名 | 理事3名、評議員3名、監事1名 |
設立時の資金 | 不要(基金制度を設けることができる) | 300万以上 |
利益の分配 | 不可 | 不可 |
定款に必要な項目数 | 7項目 | 10項目 |
一般財団法人設立の流れ
1. 基本事項を決める
「法人名(称号)」「事業内容」「事務所所在地」「事業年度」「設立時評議員・設立時理事・設立時監事の選任に関する事項」など、基本事項を決定していきます。
2. 定款作成
設立者が一般財団法人の定款を作成します。「定款」とは法人の成り立ちや運営において基本的規則をまとめたものです。設立者が最初に決めた基本事項を定款は反映していきます。定款の記載事項は以下の3種類に分類されます。
① 絶対的記載事項
必ず記載しなければなりません。1つの事項でも抜けていると、定款自体が無効になります。
- 目的
- 名称
- 主たる事務所の所在地
- 設立者の氏名又は名称及び住所
- 設立に際して設立者(設立者が2人以上あるときは各設立者)が拠出する財産
- 設立時評議員、設立時理事、及び設立時監事の選任に関する事項
- 設立しようとする一般財団法人が会計監査人設置一般財団法人であるときは、設立時会計監査人の選任に関する事項
- 評議員の選任及び解任方法
- 公告方法
- 事業年度
② 相対的記載事項
絶対的記載事項のように記載がないと定款が無効になるわけではなく、定款に記載しておかなければ、その効力を発揮しない事項です。
- 会計監査人の設置
- 評議員の任期の伸長
- 理事の任期の短縮
など
③ 任意的記載事項
法令に違反しない範囲で、定款に定めることができる事項です。
- 評議員会の開催時期
- 評議員会の議長についての定め
など
3. 定款認証
定款が完成しましたら、(主たる事務所の所在地を管轄する)公証役場に定款を持ち込み、公証人による認証を受けます。
4. 拠出金の払い込み
定款認証が終了しましたら、設立者は設立者の銀行口座に拠出金を振り込みます。その拠出金が振り込まれた通帳のコピーを法務局に提出します。通帳のコピーからは、いつ、誰が、何円振り込んだのが判断できるようしましょう。
5. 定款の定めに従い、役員の選任を行う(定款で決めていない場合)
6. 設立登記書類作成
定款認証完了後、(主たる事務所の所在地を管轄する)法務局にて一般社団法人の設立登記を行います。法人登記には、さらに書類を作成する必要があります。
<設立に必要な作成書類>
- 一般財団法人設立登記申請書
- 定款
- 財産の拠出の履行があったことを証する書面
- 設立時評議員・設立時理事・設立時監事の選任に関する書面
- 設立時評議員・設立時理事・設立時監事の就任承諾書
- 設立時代表理事の選定に関する書面
- 設立時代表理事の就任承諾書
- 設立時代表理事の印鑑証明書
- 設立時理事・設立時監事・設立時評議員の本人確認証明書
- 登記すべき事項を記録したCD-R
- 印鑑届出書
- 印鑑カード交付申請書
- その他の必要書類
7. 設立登記の申請
作成した登記申請書類と認証を受けた定款を、法務局に提出します。この提出した日が一般社団法人の設立日となります。
8. 設立登記の完了
申請書類に不備がなく、受理されましたら、約一週間から10日程度で登記は完了します。
完了日以降、登記事項証明書や印鑑証明書が取得し、次は税務署への届け出、銀行口座の開設を行います。
遺言による一般財団法人設立の流れ
遺言によって、一般財団法人を設立することもできます。遺言執行者が遺言内容の実現(遺言の執行)を行います。相続財産は少なくとも300万円以上が必要となります。
1. 遺言書作成
設立者が一般財団法人を設立する意思を、遺言で表示します。
定款に記載すべき内容は遺言で定めます。
2. 定款認証
遺言執行者が遺言の執行(遺言の内容の実現)を行い、遺言に基づき遅滞なく定款を作成し公証人の認証を受けます。
3. 財産の拠出
遺言執行者が遺言の執行を行い、遺言に基づいて遅滞なく定款を作成して公証人の認証を受けます。
4. 役員の選任
定款の定めに従い、役員の選任を行います。(定款で決めていない場合)
5. 設立手続きの調査
設立時理事及び設立時監事が設立手続の調査を行います。
6. 登記申請
設立時代表理事(設立時理事が法人を代表すべき者)を選定し、設立時代表理事が法定の期限内に(主たる事務所の所在地を管轄する)法務局に設立の登記の申請を行います。(設立登記申請日が法人格取得の日となります)