はじめに
従来の「社団法人」には様々な問題があり簡単に設立することができませんでした。問題解決のため2008年に行われた公益法人制度改革により、「社団法人」という名称の法人格は新たに設立することができなくなり、「一般社団法人」と「公益社団法人」の二つに分かれました。
一般社団法人と公益社団法人
一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づき設立された非営利の法人のことをいいます。「非営利」とは経済的な利益を目的としないことです。利益を目的としない法人ですが、利益をだしてはいけないということではありません。ただ、活動から生じた剰余金は社員や理事に分配せず、次の社会的・公共的な活動に回すことになります。
設立時の社員は最低2名以上の社員が、集まって設立の登記をする必要があります。設立後、社員が1名だけになっても一般社団法人は成り立ちます。
公益社団法人とは、一般社団法人設立後、公益認定申請を行い公益認定を受け、公益社団法人に移行することにより成り立つ法人のことをいいます。その際、公益目的事業を行うことを目的としていることが必要です。公益社団法人認定には、知識のある専門家へ相談することをおすすめします。
NPO法人や株式会社との違い
◇ 株式会社との違い
一般社団法人と株式会社の違いは、活動(事業)面からみるとあまり違いはありません。大きな違いとして利益の分配が挙げられます。株式会社の場合、生じた利益は株主に配当として利益を分配する法人であり、営利法人ということになります。一般社団法人の場合、非営利の法人のため、利益分配ができません。
<一般社団法人と株式会社の相違点>
一般社団法人 | 株式会社 | |
---|---|---|
法人 | 非営利法人 | 営利法人 |
利益分配 | できない | できる |
設立者 | 社員2名以上 | 発起人1名以上 |
役員 | 理事1名以上 | 取締役1名以上 |
資本金 | 0円 | 1円以上 |
◇NPO法人との違い
NPO法人とは正式には「特定非営利活動法人」といい、NPO法(「特定非営利活動促進法」)に基づいて、都道府県または指定都市の認証を受けて設立された法人のことをいいます。
NPO法人も一般社団法人も非営利法人であり、剰余金の分配ができず、社員(会員)を主体とした組織からなります。NPO法人と一般社団法人との大きな違いは、活動(事業)面です。一般社団法人や株式会社は基本的にはどのような事業でも行うことができますが、NPO法人は特定非営利活動の範囲内で、活動を行う必要があります。ここでいう「特定非営利活動」とは法が定める以下の20種類の分野に該当する活動であり、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とする活動のことをいいます。
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
など
⇒ 詳しくはNPO法人のページをご覧ください
一般社団法人の特徴、メリット
- 事業内容に制限がなく、短期間で事業をスタートできる
株式会社と同じように目的や事業内容は制限されておらず、公益事業や共益事業、収益事業を行うことができ、比較的自由に活動ができます。
以前は社団法人設立時に各都道府県等による許可が必要でしたが、現在は法務局への登記手続きのみで一般社団法人の設立ができるようになりました。さらに一般社団法人は資本金制度もないため、資本金の払い込み手続きといった作業が不要になります。そのため、短期間で事業をスタートできるのです。
- 小規模で設立しやすい
一般社団法人は最低2名から設立ができるため、簡単に設立ができます。設立後でしたら、1人になっても解散する必要がなく、活動を続けることができます。同じ非営利法人であるNPO法人がありますが、社員が最低10人以上必要になるため、一般社団法人と比べますと大きい規模になります。
- 社会的信頼性が高い
一般社団法人は小規模であっても、設立登記しているため、法務局で登記簿謄本から事業内容は誰でも確認でき、法人格を持たない任意団体より社会的信頼性が高いことも強みです。
また信頼性が高いため、寄付金が集めやすくなります。
- 基金・寄付を集めやすい
一般社団法人には資本金制度がないため、一般社団法人にも資金を集めやすい「基金制度」が設けられています。
また、一般社団法人は個人や任意団体に比べ、寄付を集めやすいです。法人名義の口座を作成できるため、個人名義の口座より安心して寄付ができ、寄付を募りやすくなります。
- 株式会社と比べ設立コストが安い
一般社団法人の設立時に財産は必要なく0円で設立できます。(※設立するための法定費用はかかります)さらに株式会社と比べ、定款認証手数料や登録免許税が安くなっています。
- 税金の優遇がある
共益事業が中心であり、非営利型の要件を満たせば、「非営利型一般社団法人」の扱いになり、収益事業以外の所得は「非課税」になるという税金の優遇を受けることができます。
また、公益目的事業が中心の一般社団法人は、一定の基準を満たせば「公益認定」を受けることにより、一般社団法人よりさらに社会的信頼性が高い「公益社団法人」になることができます。公益社団法人になることにより法人税や登録免許税等について大幅な優遇を受けることができます
- 法人名義で法律行為ができる
一般社団法人は法人名義で法律行為(銀行口座開設、不動産を所有するなど)を行うことができます。法人名義で口座を開設する場合は、個人の口座と分けることができるため管理しやすくなります。また契約を結ぶ際、個人名ではなく法人名義で契約すると個人が責任を負う恐れもありません。
一般社団法人のデメリット
- 複雑な書類作成が多い
一般社団法人は法人のため、事務処理や税務関係の書類が複雑です。税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。
- 剰余金の分配はできない
- 法人税がかかる
一般社団法人設立の流れ
1.基本事項を決める
まずは、最低2名以上の社員が集まり、「法人名(称号)」「事業内容」「事務所所在地」「事業年度」など、基本事項を決定していきます。
2. 定款作成
一般社団法人を設立する際には、「定款(ていかん)」を必ず作成する必要があります。「定款」とは法人の成り立ちや運営において基本的規則をまとめたものです。原則として、設立時の社員2名以上が共同で、定款を作成します。
<定款に記載する内容>
①絶対的記載・記録事項
必ず記載しなければなりません。1つの事項でも抜けていると、定款自体が無効になります。
- 名称(法人名)
- 主たる事務所の所在地
- 目的(事業の内容)
- 設立時の社員の氏名又は名称及び住所
- 社員資格の得喪に関する規定
- 公告方法
- 事業年度
②相対的記載・記録事項
絶対的記載事項のように記載がないと定款が無効になるわけではなく、定款に記載しておかなければ、その効力を発揮しない事項です。
- 経費の負担に関する定め
- 定款で定めた退職の事由
- 理事の任期短縮に関する定め
など
③任意的記載・記録次号
法令に違反しない範囲で、定款に定めることができる事項です。
- 事業年度
- 役員の員数
- 社員総会の招集時期
など
3. 定款認証
定款が完成しましたら、(主たる事務所の所在地を管轄する)公証役場で公証人による認証を受けます。
4. 設立登記書類作成
定款認証完了後、(主たる事務所の所在地を管轄する)法務局にて一般社団法人の設立登記を行います。法人登記には、さらに書類を作成する必要があります。
<設立に必要な作成書類>
- 一般社団法人設立登記申請書
- 定款
- 設立時理事の選任決議書
- 主たる事務所所在場所の決定に関する決議書
- 設立時理事の就任承諾書
- 設立時代表理事の互選に関する書面
- 設立時代表理事の就任承諾書
- 設立時理事の印鑑証明書
- 登記すべき事項を記録したCD-R
- 印鑑届出書
- 印鑑カード交付申請書
5. 設立登記の申請
作成した登記申請書類と認証を受けた定款を、法務局に提出します。この提出した日が一般社団法人の設立日となります。
6. 設立登記の完了
申請書類に不備がなく、受理されましたら、約一週間から10日程度で登記は完了します。完了日以降、登記事項証明書や印鑑証明書が取得し、次は税務署への届け出、銀行口座の開設を行います。
一般社団法人設立手続きの流れ
◇ 一般社団法人設立のご依頼にあたって
みらいへ法務事務所は、一般社団法人設立に必要な書類の作成や提出、各手続き、一般社団法人設立時の疑問に対する助言、そして設立後の支援までお手伝いをいたします。
◇ 一般社団法人設立手続きの流れ
一般社団法人設立手続きの流れについて説明いたします。
一般社団法人設立の相談
一般社団法人設立手続、設立費用のご説明などをさせて頂きます。
お問い合せフォームやお電話などでお気軽にご相談下さい。
一般社団法人設立の依頼
見積り提示の条件でよろしければご依頼下さい。(着手金を申し受けます)
基本事項の決定
お打ち合わせにて、「法人名(称号)」「事業内容」「事務所所在地」「事業年度」など、基本事項を決定していきます。
定款作成
定款書類は、会社の運営や組織についての決まりを定めたいわば「会社の憲法」です。
打合せを行い、会社組織のありようや、今後の事業展開等を反映した定款を作成致します。
公証役場での定款の認証
定款を公証人役場に認証いたします。(法的効力の発生)
みらいへ法務事務所では、定款の電子認証が行えますので、この場合4万円の収入印紙が必要ありません。
登記申請書等の作成・申請
登記申請する日が会社の設立日となります。申請書類に不備がなく、受理されましたら、約一週間から10日程度で登記は完了します。
一般社団法人設立
公益目的事業とは
公益目的事業とは公益目的事業」として認められるのは「学術、技芸、慈善その他の公益に関する事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。」とされており、詳しくは「公益財団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」第2条より「公益目的事業」として以下の23の事業が挙げられました。
- 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
- 文化及び芸術の振興を目的とする事業
- 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
- 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
- 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
- 公衆衛生の向上を目的とする事業
- 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
- 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
- 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
- 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
- 事故又は災害の防止を目的とする事業
- 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
- 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
- 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
- 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
- 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
- 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
- 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
- 地域社会の健全な発展を目的とする事業
- 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
- 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
- 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
- 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの
(「公益財団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」第2条より)
公益事業、共益事業、収益事業とは
<公益事業>
公衆の日常生活に欠くことのできないものをいいます。
- 運輸事業
- 郵便、信書便又は電気通信の事業
- 水道、電気又はガスの供給の事業
- 医療又は公衆衛生の事業
(労働関係調整法8条より)
<共益事業>
受益(利益を受けること)の機会が、特定多数の者に限定されている場合。
<収益事業>
政令で定める以下の34業種の事業で、事業場を設けて、継続して行う事業のことをいいます。
<政令で定める34の事業>
1.物品販売業 | 13.写真業 | 25.美容業 |
2.不動産販売業 | 14.席貸業 | 26.興行業 |
3.金銭貸付業 | 15.旅館業 | 27.遊技所業 |
4.物品貸付業 | 16.料理店業その他の飲食店業 | 28.遊覧所業 |
5.不動産貸付業 | 17.周旋業 | 29.医療保険業 |
6.製造業 | 18.代理業 | 30.技芸教授業 |
7.通信業 | 19.仲立業 | 31.駐車場業 |
8.運送業 | 20.問屋業 | 32.信用保証業 |
9.倉庫業 | 21.鉱業 | 33.無体財産権の提供等を行う事業 |
10.請負業 | 22.土石採取業 | 34.労働者派遣業 |
11.印刷業 | 23.浴場業 | |
12.出版業 | 24.理容業 |