はじめに
医療法人とは医療法で定められた法人の形です。株式会社は営利目的ですが、医療法人は営利を目的とせず、かつ共益を目的とする非営利団体です。
医療法人を設立するためには、年2回開かれる医療審議会にて意見を聞く必要があるため、計画的に手続きの準備をしなければなりません。医療法人は許認可制であり、設立も容易にはできません。さらに設立後には、非常に多くの手続きがあります。医療法人設立認可申請はいつでも申請できるわけではなく、年2回開かれる医療審議会にて意見を聞く必要があるため、計画的に手続きの準備をしなければなりません。日々の医師としての多忙な業務をこなしながらの手続きは容易なことではなく、多大な時間と労力が必要です。
医療法人化によるメリット・デメリット
メリット
- 分院開設
法人化により、個人経営の診療所には認められていない分院開設が可能になります。
- 節税
・個人課税から法人課税に代わることで、最高税率が下がります。
・所得が「給与」として支払われるため、給与所得控除が適用されます。(最大230万円)
・理事に配偶者や後継者を配して所得を分散することにより、節税メリットが得られます。
・個人事業では認められていない退職金(所得税・住民税の大幅軽減が可能)の受領により老後の生活設計が安定します。
- 医療機関の引き継ぎがスムーズ
個人事業の場合は名義変更ができず、さらに継承する場合は多額の相続税がかかります。医療法人の場合は、理事長と病院・診療所の管理者の変更を行うだけで、クリニックを継承できます。
など
デメリット
- 交際費の損金算入の制限
個人事業の場合、交際費は全額経費ですが、医療法人化すると交際費には上限が設けられ、そのうち10%は経費計上ができなくなります。
- 事務手続の増加
毎年事業報告書や資産登記、理事会の議事録などを作成しなければなりません。設立後の事務手続きも増加します。
- 社会保険と厚生年金への加入義務化
個人事業の場合、従業員が5人未満であれば社会保険と厚生年金の加入義務はありませんが、医療法人化すると、従業員の人数に関わらず社会保険と厚生年金の加入が義務化されます。
など
医療法人 設立要件
【人的要件】
①3名以上の社員
②3名以上の理事、1名以上の監事
理事長は医師または歯科医師である理事から選出し、医療法人を代表します
③医師または歯科医師のような管理者となる者は、理事になっていること
④役員であるものは以下のA)~C)に該当していないこと
A)成年被後見人及び被保佐人
B)医療法、医師法、歯科医師法その他医事に関する法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
C)禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
【財産的要件】
診療用不動産、医療機器、備品等を確保した上で、2か月分以上の運転資金を有すること
医療法人設立のご依頼にあたって
みらいへ行政書士法務事務所は、医療法人設立に必要な書類の作成から提出、各手続きのお手伝いをいたします。
医療法人設立にあたって、知事の認可が必要です。そして知事が設立の認可をするにあたっては、年2回開かれる医療審議会で意見を聞かなければなりません。医療審議会に合わせて計画的に手続きの準備をしていきましょう。
医療法人 設立の流れ
1.必要書類の収集・作成
提出すべき必要書類は各都道府県で異なりますので、各都道府県の担当部署に確認することが必要です。

2. 定款作成
医療法人を設立する際には、「定款(ていかん)」を必ず作成する必要があります。「定款」とは法人の成り立ちや運営において基本的規則をまとめたものです。

3. 設立総会の開催
申請書類提出後、申請事項を変更することは出来ませんので、十分に検討しましょう。

4. 設立認可申請書の作成

5. 設立認可申請書の提出(仮受付)
設立認可申請書及び各種添付書類を各都道府県の窓口に申請します。提出したものは返却されませんので、控えは保管しておきます。

6. 設立認可申請書の審査
保健所等の関係機関への照会や実地検査、面接を含みます。

7. 設立認可申請書の本申請(本受付)

8. 医療審議会への諮問

9. 答申
医療法人設立を認可する旨の答申をします。

10. 設立認可書交付
医療法人認可書及び認可証明書の受領用紙と引き換えに認可書と認可証明書が送付されます。

11. 設立登記申請書類の作成・申請
医療法人認可の日から2週間以内に、主たる事務所を管轄する法務局で医療法人の設立申請をおこないます。
【医療法人の設立登記事項】
① 名称
② 事務所所在地
③ 目的・業務
④ 役員に関する事項(理事長の氏名・住所)
⑤ 法人の資産総額

12. 登記完了(法人成立)
【登記完了後の手続き】
・医療法人登記完了届を都道府県知事に提出
・診療所開設許可申請を所轄保健所へ申請・届出
・保険医療機関指定申請を地方厚生局で行います
・法人設立届出書を税務署に提出
など